贈与・贈与税を使いこなしましょう贈与・贈与税

生前贈与のバラエティを理解しましょう。

新たな贈与税の税率表が設けられました。

平成27年1月1日の贈与より、「一般の税率」のほかに、「直系尊属から贈与を受けた場合の緩和税率」が設けられました。20歳以上の直系卑属(孫・ひ孫も含む)に対する贈与については、贈与額が410万円を超える部分について緩和税率が適用されます。
例えば4,200,000の贈与の場合を見てみましょう。

  贈与額 基礎控除額 課税対象額 税率 税額
一般税率 4,200,000 1,100,000 3,100,000 20% 620,000
緩和税率 4,200,000 1,100,000 3,100,000 15% 465,000

なお、贈与額3,100,000円以下は10%、4,100,000円以下は15%です。

相続時精算課税制度の適用者の年齢要件が緩和されました。

平成27年1月1日の贈与より、60歳以上の祖父から20歳以上の孫への贈与の場合でも2,500万円の特別控除が適用されることになりました。

生前贈与の活かし方

  1. 基礎控除額110万円までの贈与を長期に生かすことを考える。この場合、毎年、贈与契約書を作成することと、受贈者において預貯金を管理することが必要です。
  2. 遺産想定額と相続税負担額を試算します。その場合の実効税率が何%になるかを求めます。それに見合う贈与税の実効税率までの贈与額を毎期贈与していきます。相続税の負担率と同じ負担率までの贈与をしていくという考え方です。
  3. 今後とも価値の増加が見込まれる、自社株式、投資有価証券、投資不動産などがあれば、相続時精算課税制度を活用して早期に後継者等に移動することが選択肢となります。
  4. 遺産の移行には遺言による方式もあります。現状において資産の移行を見届けていく場合には、相続時精算課税制度を活用することに意義があります。その他に、これから紹介する非課税制度を活用した教育資金、住宅資金等いろいろありますので、検討してみましょう。
  5. 生前に資産移転を行うことで、親族間の遺産を巡る争いを防ぐ効果もあります。

贈与税のいろいろな制度のご案内

① 暦年贈与制度

これが通常の贈与税の計算の仕組みです。110万円の基礎控除額を引いた残額に累進税率を乗じた金額が納付税額となります。

② 相続時精算課税制度

基礎控除額が2,500万円です。それを超える部分には一律20%の税率を乗じます。
平成27年1月1日からは贈与者は父母、祖父母、受贈者は20歳以上の子、孫となりました。
相続発生時には、この制度適用により贈与された金額も相続財産の価額に含まれて相続税額の計算をします。その際には、これまで納付した贈与税額と精算をし、不足額があれば納付、超過額があれば還付されます。それで、相続時に精算する課税制度という名称になっています。ただ、その活かし方は先に述べたところにあります。

③ 教育資金の一括贈与制度

父母や祖父母などが、子供、孫、ひ孫への授業料などの教育費を一括贈与したとき、1,500万円を限度に非課税とするものです。
期限も平成31年3月まで延長されました。

④ 結婚・出産・育児資金の贈与

平成27年4月に新設される制度です。20歳から49歳までの子や孫に対して結婚、妊娠・出産、育児向け資金の贈与に対して1,000万円(結婚費用については300万円)までの非課税制度です。

⑤ 住宅取得資金贈与に関する特例

直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、その適用期限が平成31年6月30日まで延長されました。

⑥ 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除

婚姻20年以上で居住用不動産または居住用不動産の購入資金などの条件に合致すると、評価額2,000万円(基礎控除額110万円を合算すると合計2,110万円)を限度に非課税とするものです。

⑦ 非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度

後継者が認定中小企業の先代経営者から株式の贈与を受けた場合に納税を猶予する制度です。中小企業における事業承継を円滑に行うための制度の一環として創設されたもので、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」を受けているものです。

⑧ 農地等の贈与税の納税猶予の特例

農業を営んでいる方が、その農地の全部を、その農業を引き継ぐ相続人に贈与した場合には、その贈与税について、受贈者が農業を営んでいる限り、その納税を猶予するものです。

上記の③から⑧までの制度の少し詳細を述べていきます。

③ 教育資金の一括贈与制度

平成27年12月31日までの間に、教育資金に充てるために信託銀行、銀行、証券会社等に預入れた金額のうち、1,500万円までの金額については贈与税を非課税とするものです。

  • 贈与者は受贈者の直系尊属とされています。受贈者は直系卑属で満30歳未満の者とされています。
  • 教育資金の範囲は二種類あります。
    一つは、「学校等に直接支払われる入学金、授業料その他の金銭で一定のもの」とされ、1,500万円まで非課税となります。
    二つは、「学校等以外の者に、教育に関する役務の提供として直接支払われる金銭」で、500万円まで非課税となります。

④ 結婚・出産・育児資金の贈与

  • 親や祖父母が金融機関に作った専用口座にあらかじめお金を預けておけば、子や孫1人につき1,000万円(結婚費用については300万円)まで非課税とするものです。
  • 資金使途は、挙式費用、出産費用、乳幼児の治療費、保育費などです。

⑤ 住宅取得資金贈与に関する特例

  • その年1月1日現在で20歳以上の直系卑属への贈与
  • 住宅取得資金の要件は次のとおりです。
    1. 住宅用家屋の新築または建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得
    2. 既存住宅用家屋の取得
    3. 受贈者が所有している住宅用家屋につき行う増改築等
    4. 住宅用家屋の新築、取得または増改築等とともにするその家屋の敷地の用に供されている土地や借地権等の取得
  • 非課税枠を超えた部分については暦年課税か相続時精算課税のいずれかで課税される
  • 非課税限度額については次のように見直されました。
    1. 住宅用家屋の取得等に係る対価の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合
      取得等に係る契約の締結期間 良質な住宅用家屋 左記以外の住宅用家屋
      平成29年10月~平成30年9月 1,500万円 1,000万円
      平成30年10月~平成31年6月 1,200万円 700万円
    2. 上記イ以外の場合
      取得等に係る契約の締結期間 良質な住宅用家屋 左記以外の住宅用家屋
      ~平成27年12月 1,500万円 1,000万円
      平成28年10月~平成29年9月 1,200万円 700万円
      平成29年10月~平成30年9月 1,000万円 500万円
      平成30年10月~平成31年6月 800万円 300万円

⑥ 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除

夫婦の間で次のすべての要件にあてはまる贈与が行われたときは、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円までの配偶者控除が受けられます。

その条件:
  • 夫婦の婚姻期間が20年以上であること
  • 贈与財産が居住用の土地家屋であること(居住用の土地家屋の購入資金及び持分の贈与)
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与を受けた土地家屋に実際に居住し、その後も引き続いて居住する見込みであること
  • 同一の配偶者からは一生に一回だけ適用を受けることができます。

⑦ 非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度

この制度により自社株を贈与された場合には、課税される贈与税が全額納税猶予されます。
それに必要な条件として次の3点があります。

  • 全体の3分の2に達するまでの株式を一括で贈与すること
  • 先代経営者は役員を退任・後継者は役員に就任して3年以上経過していること
  • 贈与した後も5年間は、株式の保有を継続すること、代表者であること、雇用の8割を維持していることなどの条件があります。
    また、贈与税の納税猶予制度の適用中に先代経営者が亡くなった場合には、要件を満たせば相続税の納税猶予制度に移行することが可能です。

⑧ 農地等の贈与税の納税猶予の特例

  • 農業を営んでいる者が、農業の用に供している農地の全部を、その農業を引き継ぐ推定相続人に贈与した場合には、受贈者が農業を営んでいる限り、その納税を猶予するというものです。
  • この猶予された税額は、受贈者または贈与者のいずれかが死亡した場合には、その納付が免除されます。
  • ただし、贈与者が死亡した場合には、その農地等は、受贈者が相続または遺贈により取得したものとみなして相続税の課税対象となります。
  • なお、免除されるときまでに特例農地等を譲渡するなど、一定の事由が生じた場合には、納税猶予が打ち切られ、猶予されている税額の全部または一部を利子税と併せて納付する必要があります。

事業承継対策と贈与税

事業承継対策とは、経営者の保有する自社株式等の財産権の移行と、企業経営内容の移行との二つの課題があります。ここでは税制上の課題として、自社株式をいかに後継者に移行していくかが検討対象となります。
これまで述べてきた内容から抽出しますと、暦年贈与の活用、相続時精算課税制度の活用、そして非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度、さらには非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度の活用などを検討することになります。
また、後継者として子等の親族、社員その他の企業関係者、第三者へのM&Aや企業再編の場合などによりその活用策も異なってきます。
これらについては、事業承継対策のぺ-ジにてご覧いただきたいと思います。当事務所においては、あらゆる状況に即応した対策案をご提示致しております。

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